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【短編】 猫博士

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 私は猫が好きだ。しかし自分のスクーターに小便を引っかけられのは我慢ならないし、猫が好きであることと、好きなものから被害を受けることは別問題なのである。そこで私は、向かいの家に住んでいる猫博士に相談したのだった。
「でもね、好きな相手から被害を受けることは、むしろ喜びになることもあるんじゃないかしら?」
 猫博士は年下の女性であり、私が相談するとそう答えた。しかし私が聞きたいのはそういう精神的なことではなく猫の小便をどうにかしたいという話だ、と注文を付けると、彼女は続けてこう言った。
「少なくとも、その相手から被害を受けることによって何かの繋がりを持てるわけだし、好きな相手と全く接点が持てない場合と比べれば、ずっと幸せだと思えるわけで」
 いやいや、そんなストーカーの心理みたいな話ではなくて……。
「じゃあ、手間のかかる子ほど可愛いっていう心理なら一般的でわかりやすいかしら?」
 えーと、それは被害じゃなくて子育ての苦労の話でしょ。
「いいえ、どちらも根っこは同じで、コミュニケーションを深めることが喜びに繋がるっていう話よ」

 結局、猫博士に相談しても無駄だと判断した私は、猫除けグッズであるトゲトゲ付きのシートや忌避剤などを購入して自分でどうにかすることにした。途中で猫の執念深さにくじけそうになったが、最終的にはスクーター用のカバーを掛ければどうやってもスクーター本体に被害が及ぶことはないという極めて当たり前の発想に辿り着き、半年ほどでようやく問題を解決することができた。しかしその問題解決と同時に、今度は猫博士と、私の双子の弟が結婚することになってしまったのだ。話が混乱してしまって申し訳ないが、私には双子の弟がおり、二卵性なので顔がそっくりというわけではないが、そこそこ似ているのでたまに間違われることもある。そしてもっと話が混乱してしまうことを覚悟して言うと、その弟の存在を両親から知らされたのは今から一年前のことであり、ずっと一人っ子だと思っていた私はその事実に今でも混乱している。時系列で言うと、一人っ子→双子の弟が登場(一年前)→猫の小便問題(半年前)→猫博士と弟の結婚(現在)、という流れになる。弟とは未だに兄弟らしい話ができていないし、猫博士と親しかったのは自分の方だと思っていたので、そのことに対するモヤモヤした気分について猫博士の姉である犬博士に今から相談しようと思っている。
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Author:euReka(エウレカ)
euRekaと申します。小説や詩を書いています。

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