【詩】静かな風景とエンジン

 トラックのエンジンを止めると、灰色の風景が静かに私を待っていました。もう誰もいないのだろうねと私が私の心に話しかけていると、海のように広がる瓦礫の中から、黙りこくった人々が落ち葉のように現れて、なんとなくトラックの周りに集まってくるのです。私はトラックの荷をほどき、積んできたペットボトルを一本づつ、その無言の人々に配りました。子供から老人まで、色々な人がいましたし、手や足が無い人も沢山いました。ある女性は、赤ん坊を胸に抱いたまま、首から上をもがれてしまっていたのですが、ペットボトルを手渡すと、もう失ったはずの頭を下げてお辞儀をしていました。空はその内部に残酷な結論を孕んだように重く垂れ、黒い鳥があてもなく、定まらぬ像を描きながら旋回していました。私はひたすらペットボトルを一人一人に配り続けていました。そして最後の一本を配り終えるころ、遠い予感を知らせるように素っ気なく雪が降り始め、灰色の瓦礫や人々の群れを音もなく、白く染めていきました。私の頬にぶつかってくる雪に、どのような温度も感じませんでした。それはただ何ものも意味することのない、それはただ白いだけの何かでした。私はまた来ますからと静かな風景に言い残し、再びトラックのエンジンを回しました。よく考えてみれば、機械であるトラックのエンジンだけが、いつも通り誠実に働いているのでした。

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Author:euReka(エウレカ)
euRekaと申します。小説や詩を書いています。

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