【詩】物と物の間にすんでいる

わたし名前がありませんので
誰もわたしを呼ばないの
わたし木の葉と地面の間とか
鉛筆とノートの間とかいろいろな物と物の間に
ちゃんとわたしいるのだけれど
みんな名前のある物にしか興味がないから
その間にいるわたしのことなんて
きっと知る必要さえないのね
だけどたまに木の葉の上で足を滑らしたり
書いた文字がヘンテコになったりしたとき
それは物と物の間にすんでいる
わたしのイタズラだってことを
あなたはきっと
思い出してね

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【詩】喉に刺さった棘のような

もし生きることが罪であるなら
死ぬことはその罪に対する償いか?

だから人間は自殺することで生きることの罪を
きれいさっぱり清算できるということか?

もしそうだとするなら
人間とは実に悲しい生き物である

なぜなら
生きることが罪であることを極限まで追求すれば
すべての人間は
その罪を清算するために自殺しなければならないことになるし
自殺する勇気のないものは
いま生きていること
そのものに対して絶望しなけれならなくなる

つまり人間にとっての
最大の問題が「罪」であるとすれば
その罪という
まるで喉に刺さった棘のような
ただもどかしいだけの痛みさえ失ってしまえば
人間は絶望する必要がなくなって
自殺するものもきっといなくなるのだろう

なぜなら
自殺をすることで
わざわざ罪を清算する必要などないわけだし
自殺することで
我々がまだ人間らしい人間であることを
命を棄ててまで証明する必要などないのだから

【詩】おなじ生身の人間として

まず
一つの大前提として
採れた作物から何ベクレルとかいう
東京電力
福島第一原発由来
と思われる放射性物質が検出されてしまうような土地に
生身の人間が
普通に生活していてもいいのですか?

日本国政府と
われわれ日本国民は
その厳然とした事実を
ただ黙って
許してもいいのですか?

あるいは
そのような放射能汚染された場所で
日本国政府と
あなたがた沈黙した国民は
そのような地獄に等しい場所で
おなじ生身の人間が
幸せに暮らしていけるなどと
心の底から
真心からそう考えているのですか?

日本国政府と
あなたがた沈黙した国民は
この放射能汚染された場所で
青春を過ごし
恋をし
身を立てるための仕事をみつけ
やがて
素敵な相手と結婚し
子どもを産み
育て
その子どもが立派な大人になるまで
その子どもを一人の人間として守りきる
という未来を
この放射能汚染地帯において
生身の人間が
人生をどのように過ごすことが可能かという想定を
日本国政府と
あなたがた沈黙した国民は
たった一回でも想像したことがありますか?

私は
原発に賛成か
あるいは反対かという
野暮なことは一切問わない

私が本当に問いたいのは
一つだけ

あなたは
この放射能汚染地帯において
一人の人間を
産み育て
ただ一人の人間として
愛せる覚悟が
あるかどうか

それだけを
私は問いたいのです

【詩】なぜ、いま一番困っている人々にお金を使わないのですか?

クリスマスプレゼントを
政府は
早急に検討せよ
東北や関東の被災者に対し
一人あたり100万円を支給せよ
津波の被害によって家や家族を失った者に
そして放射能汚染によってふるさとを失った者に対して
日本国政府はクリスマスプレゼントを支給せよ
家や家族やふるさとを失った者にとっては
100万円など はした金に過ぎないかもしれないが
これから正月を迎え
次の年をどう生きていこうかという気持ちに
少しは余裕をもって向き合えるのではないか
だって日本には
腐るほどのお金が有り余っているのでしょ?
だっていま
日本が円高になってるのは
日本に富が
世界にじゅうぶん通用するだけの価値のあるお金が
日本のどこかにあふれているという
何よりの証拠でしょ
だったらなぜ
いま一番困っている人々にお金を使わないのですか?
クリスマスプレゼントを
しないのですか?

【詩】むき出しになった、痛みの先端で

関東の人たちはその善意から
福島の人たちを可哀想だと思っているが
西日本の人たちはその慈悲の気持ちから
東日本の人たちを可哀想だと思っている
さらに北半球の人たちはその理性から
現在の日本に人は棲めないと判断を下しながら
日本という不思議な国の崩壊を憐れんでいるし
南半球の人たちはその北半球で起こった悲劇を遠くに眺めながら
まるで神話の中で語られる一つの警告として
あるべき日常の日だまりの中で
今という瞬間を確かめている
そして
福島の人たちは
ただ 今を生き
善意でも慈悲でも
理性でも神話でもない
むき出しになった
痛みの先端で
ひたすら
呼吸し
意味を探している
それはそうだけど
なぜ福島から逃げないの?
東日本から
日本から
なぜ北半球から逃げないの?
という素朴な問いに
いったいどれだけの痛みが切り捨てられていることか
その切り捨てられた痛みの総量を
熱エネルギーに変換することが出来れば
人類が棲み慣れた地球を棄て
火星へ移住することも可能
なんて
そんな都合のいいこと
あるわけないでしょ

【詩】大人がんばれ

難しい言葉より
かんたんな言葉のほうが難しくて
イライラするより
笑顔でいるほうが難しいの
ほんとは簡単なことなんだけど
大人はみんな病気だから
簡単なことが難しくなっちゃうの
だから子どもはね
大人のことを多目に見てあげなきゃいけないし
だから大人がんばれって
みんなで応援して欲しいの

難しいことは簡単で
悲しみは喜びでしょ?
それから
硬いものは柔らかくて
苦いものは甘くて
海と空は毎日入れ替わっているから
お日様は西から昇って東へ沈むっていう
すごく当たり前で簡単なことさえ
なぜ大人は理解できないのかなっていう疑問は
絶対に変じゃないよ

【詩】私という私でない何か



心理学と
社会学と
文化人類学が
大きらいです
だけどその

とは
つまり
近代によって鋳造された

であり
現代によって解体された

という何かであり
その

という存在は
近代における

という物語の創造による

という欲望の大量生産と

という欲望の大量消費でしかなかったことを知りつつ
現代における

という物語を解体してもなお解体することのできない
ある塊を発見し
その

の悲しみを強化することで
この世界を説明し
まったく新しい形態の
私ではない私
を創造する欲望を抱いたものたちがすなわち
心理学と
社会学と
文化人類学でしたね
だけどいま目の前に広がる世界のありようをご覧なさい
絶え間ない戦争や
大規模な原発事故
そして金融資本の暴走に
多くの人々が翻弄され
一秒ごとに命をすり減らしているじゃありませんか
あなた方のやっている学問というものは
つまり

という
よくわからない欲望を
あらゆる言葉を尽くして説明しただけに過ぎませんし
しかも

という欲望は
近代に創造され
現代によって強化された
ハリボテの人形でしかないじゃありませんか
あなた方はそれを知りつつ
あえてその幻想乗っかったのです
つまり

とは
ただ果てしなく続く
あなた方のよくわからない欲望を満たすための
賞味期限のある
オモチャです

【詩】何かをあきらめた猫

お正月には
お雑煮を食べて
書き初めをして
コタツの中に棲んでいる猫を
雪だるまみたいにまるめ
冬景色の窓に向かって思い切り投げます
そして
「生老病死」
と書き初めした半紙を破り
新たに
「がんばれ私」
と半紙に書きますが
それもやっぱり破りちらして
最後の一番まともな意識を絞り出しながら
「たすけて」
という言葉を
年明けの書き初めにすることを決定します
猫が冬の窓から帰ってきたら
こんどはコタツの方を投げるしかありませんが
猫はきっと納得しないでしょうね
でも正月の午後は膨れたおモチみたいに眠たくて
ただ空いっぱいにまんまるい円を描くだけだから
何かをあきらめた猫と私は
仲良く昼寝でもしてますよ

【詩】うたを歌ったり うんこをしたり

この身は一つしかないけれど
心はいくつもあるのです
昼の私は夜の私ではないし
山や都市を流れる川のように
あらゆる風景を集めながら
心は広い海をめざします

クジラは色んな心を食べて
体が大きくなって
うたを歌ったり
うんこをしたり
ときどき人間に食べられたりしながら
大きな身を一つ差し出して
私の心を
海から地上に送り帰してくれるのですが

陸に打ち上げられたクジラは
山のように巨大すぎて
私の小さな身では
クジラの心を回収することなど出来るはずもありませんし
ただただ
苦しくて
一本の棒のみたいに寂しくなって

大好きなあなたに電話を掛けました

【詩】こだま

「イルカはいるか?」

 イルカはいるよ

「じゃあ、ハルカはいるか?」

 いいえ、ハルカは人間よ

「じゃなくて、ハルカさんはご在宅ですか?」

 ええ、ハルカは在宅しておりますが

「それは良かった」

 なにが良かった?

「だって、ハルカさんに会えるのですからね」

 だって、わたしがそのハルカなのにね

「えっ、まじか?」

 ええ、間近にいますけど

「じつはね、ぜんぶ冗談のつもりで、ずっと会話していたのだけれど」

 じつはね、ぜんぶがすべて、冗談ではないのよ

「じゃあなにか一つでも、ほんとうのことがあるのですか?」

 まあ一つくらいは、ほんとうのこともあるかもね

「じゃあイルカは?」

 いるよ

「じゃあハルカは?」

 人間だよ

プロフィール

Author:euReka(エウレカ)
euRekaと申します。小説や詩を書いています。

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