【詩】311へ向けての〈9〉

日常には重さがある。
空気でさえ、1リットルあたり1.3グラムの重さがあるのだから、
火曜日や、2時46分にも、
それに見合うだけの重さがなければいけない。

1秒、1分、1時間、1日に重さがなければ、
たとえそれを100年分重ねても、
それは全く存在しないことになる。
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【詩】無題106

青空。
屋根に寝転んだときの青空と、
砂漠の真ん中で死にかけたときの青空。
どちらも実際にはやったことがないし、
空想の中で知っているだけの青空。
僕はまだ本当の青空を見たことがない。
うんこを漏らしたときも、
初めてセックスしたときも
空を見ていなかった。
一番大切なことを僕は見逃していた

【詩】311へ向けての〈8〉

「絆」を裏返すと、
そこには取り返しのつかない「断絶」が
横たわっていた。
まるで余命少ない重病患者の笑顔に、
何も知らぬまま騙された気分。
絆、絆と言われるたび、
その重病患者の寂しい笑顔が浮かぶ。
わかり合えない心が、
静かな悲鳴を上げている。
耳を澄ませないと聞き取れないほど静かな

【詩】311へ向けての〈7〉

「鳥カゴが、鳥をさがしに飛んでいった」とは、
F.カフカが、
何気なくノートに記した言葉である。

「牢獄が囚人を捕まえにいった」
「病名が病気をつくった」
「武器が戦争を画策した」。
主客逆転の世界。

20世紀は
「平和のため戦争」を繰り返した。
「平和利用の原発」が
放射能を撒き散らした

【詩】311へ向けての〈6〉

人はいつか死ぬ。

しかし突然襲ってきた津波に
ただ飲まれるしかなかった人たちは、本当に、
ただ
死んでしまったのだろうか。

あるいはたった一個の原子爆弾で、
その街に暮らしていた人たちの日常を、
何事もなかったかのように、
キレイさっぱり
消し去ることができるだろうか。

私は消せないと思う

【詩】311へ向けての〈5〉

8時15分で止まった時計を
見たことがある。

その時計の持ち主は
きっと几帳面な性格で、
毎日時計のネジを回し、
ときどき
ラジオの時報に耳を澄ませながら、
ずれた分の時間を
きちんと直していたに違いない。

そうでなければ時計の針が、
原爆投下の8時15分に、
ビッタリと
止まるはずがないのだ

【詩】311へ向けての〈4〉

そりゃあ、いつか花は咲くだろうさ。
花は、花は、花は咲くだろうさ。
百年後、千年後、万年後、
いやきっと十万年後には、
きれいな、きれいな、きれいな
花が咲くだろう。

ネアンデルタール人は20万年前の、
赤穂浪士は3百年前の花を見ていたのさ。

花は、花は、花は咲く。
でもそれは今じゃない

【詩】311へ向けての〈3〉

とにかく記録しておかなければと思った。
そうしなければ311は
いずれ無かったことにされてしまうという焦りがあった。
その時の気持ちが別のものに変わっていくことが、
とても
恐ろしいことに思えた。

「人は変わっていく」
という言葉は不遜である。

変わらないものがあるから
人は人でいられる

【詩】311へ向けての〈2〉

普通に生きるってことが、
よくわからなかった。
だから311がとつぜん現れて、
少し救われた自分が
いるんだ。

ある日とつぜん
津波に飲まれ、
ある日とつぜん
家族が放射能に汚染される。

そんなことこの世の中にあるんだと、
ふと納得した瞬間に
生きることが少し楽になった。

普通こそあり得ないと。

【詩】311へ向けての

誰のものか知らぬ、
指や眼や心臓や、
バラバラに砕けた肉片を拾い集めながら、
ようやく自分の身体を補っている。
みな私のことを生きた人間だと思っているが、
私は311で死んだのだ。
死者であると気付かれぬように、
うまく日常をつくろっているだけだ。

あの日、
生き残った人間は一人もいない

プロフィール

Author:euReka(エウレカ)
euRekaと申します。小説や詩を書いています。

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